1871年、千葉県銚子に生まれる。明治時代を代表する詩人・小説家であり、ジャーナリストや編集者としても活躍した。
代表作には、詩的な表現や自然の美しさを重視した浪漫的な作品『武蔵野』や『牛肉と馬鈴薯』、そして社会や環境が人間に与える影響を鋭く描いた自然主義的な作品『春の鳥』などがあり、現実をありのままに描く自然主義的な視点も持ち合わせていた。このように、国木田の作品には浪漫的な感性と自然主義的な観察眼の両方が共存しているのが特徴である。
幼少期は父の仕事の関係で山口県萩市、広島県、岩国市などで過ごす。1888年（17歳）、現在の早稲田大学英語普通科に入学し、吉田松陰や明治維新に関心を持つ。後に英語政治科へ転科し、1891年にはキリスト教の洗礼を受けた。
その後、廃校となった小学校の校舎を借りて波野英学塾を開き、7歳年下の弟・収二や近隣の子どもたちに英語や作文を熱心に教えた。さらに、九州・大分県佐伯市の学校で英語と数学の教師として赴任し、弟と共に下宿しながら教育に尽力するが、クリスチャンであることを理由に生徒や教師の反発を受け、わずか一年足らずで退職を余儀なくされる。
佐伯滞在中、尺間山や彦山、元越山などを登り、特に城山を愛して何度も訪れた。その様子は日記『欺かざるの記』に詳しく記されている。この九州の自然に触れた経験は、後の『春の鳥』『源おぢ』『鹿狩』などの作品に生かされた。
佐伯を離れた後、海軍の従軍記者として日清戦争に参加し、その後、新聞記者として名を馳せる。帰国後、日清戦争従軍記者としての経験を持つ晩餐会で、日本キリスト教婦人矯風会幹事の娘・信子と恋に落ち、両親の反対を押し切って結婚。しかし、極度の貧困で実家に戻らざるを得なくなり、翌年、信子は失踪し離婚となった。深く傷ついた独歩は、師と仰ぐ人々に渡米を勧められるも、実現には至らなかった。
その後、『武蔵野』『初恋』『牛肉と馬鈴薯』などの有名な作品を残し、37歳の若さでその生涯を閉じた。
